エール
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◇「エール (ビール)」 ◇「ビール」 |
エール(英語:ale)は、ビールの一種。麦芽(モルト)を常温・短時間で発酵させたもの(上面発酵と言われる)。
ビールは発酵の方法により、ラガーとエールに大別される。現在の日本で一般に「ビール」と言われて想像されるものはラガーである。ラガーは麦芽を低温で長時間発酵させたもの(下面発酵)で、エールとは酵母の種類が異なる。上面発酵は下面発酵よりも醸造が容易といい、19世紀にラガーが広まるまでは「麦酒」の主流はエールだった。エールの特徴は「複雑な香りと深いコク」、ラガーの特徴は「なめらかでマイルドな味」とされるが、それぞれの様式のうちにもさまざまなスタイルがあるため、一概に特徴を分けることはできない。エール(上面発酵ビール)の銘柄では「ギネス」が知られる。日本の「地ビール」の多くもこれである。
CardWirthとエール
CardWirthではしばしば(「ビール」ではなく)「エール」を呑む場面が登場する。たとえば赤塚氏『機械仕掛けの番犬』や齋藤氏『賢者の選択』など。エールは「ソード・ワールド」等でも用いられており、「ビールよりそこはかとなく中世ファンタジーっぽいヒビキがするからではないだろうか」[註1]と推測されている。
中世ヨーロッパでは、エールは子供にも適したアルコール飲料と見なされていたという。もっとも、満20歳未満の者の飲酒を禁じる未成年者飲酒禁止法(1922年制定)のある現代日本で制作されるCardWirthシナリオでは、子供は飲んではいけないものとされることが多い。この場合、酒を飲むシーンで「_子供」のクーポン所持分岐が行われ、特別なイベントやメッセージが展開される。
おもな関連シナリオ
- 齋藤氏(groupAsk)『賢者の選択』(1999年1月)……エールを飲むシーンがある。
来歴
麦酒(エール)の歴史
「エール」(英:ale)の名はインド・ヨーロッパ祖語の音節要素"alu-"(酔う、魔術的な)から来ているという。なお、「ビール」(蘭:bier、英:beer)はラテン語"bibere"(飲む)が起源とされる。
麦芽を原料とする発酵飲料は、紀元前3000年頃の古代メソポタミアで既に醸造されていたといい、同種のものがエジプトでもつくられた。ただし古代オリエントの麦酒は、「ふやかしたパン」というべき食物に近いものだったようだ。古代のケルト人やゲルマン人は麦芽を水に浸すという、より現在の麦酒に近い製法で醸造を行っていた。
ブリテン島のケルト人の間では麦酒を含めた穀物酒の呼称として「エール」が用いられるようになったという。5世紀にブリテンを征服したアングロサクソン人にもエールは庶民の酒として定着し、やがて酒場(エールハウス)や宿(イン)で供されることになった。このころの古英語では「エール」と「ビア」は異なる意味を持っていたとする説(aleは麦酒、beerはサイダーのような飲料を指す)があるが、ノルマン・コンクエスト(1066年、ノルマンディ公ウィリアムによるイングランド征服)後、「ビア」も麦芽飲料をさす呼称として用いられるようになったという。ブリテン島においてはエールの醸造は家事のひとつであり、女性はエールのレシピと仕込み用の鍋を嫁入り道具に持っていったという。
中世初期のヨーロッパ大陸において「麦酒の醸造権」は王侯が所有していた重要な権利の一つであった。これら王侯から、のちには修道院、さらに都市・市民にも醸造権が認められていくことになる。修道院で醸造された麦酒は、僧侶たちの食料として(麦酒を「断食」に抵触しない液体と解釈した)、また巡礼者や放浪者へ施す食料として用いられた。また、当時の知識人たる修道僧たちは醸造技術の発展に大きな役割を果たしたといい、いわば秘伝の形で高級麦酒が作られるようになった。
中世、麦酒の発酵の安定と風味付けのためにさまざまなハーブが添加されていたが、やがてヨーロッパ大陸ではホップを用いることが定着したらしい。1516年にバイエルン侯ヴィルヘルム4世が公布した「ビール純粋令」は、麦酒は大麦とホップと水のみを用いること(のち、酵母を追加)が定められ、現在もこの基準がドイツのビール産地で受け継がれている。ただし、イギリスではホップへの抵抗が残り、ホップを用いたものを「ビア」、ハーブ類を用いたものを「エール」と呼び分けたともいう(イギリスでのホップの普及は17世紀ともいう)。
※ ここの記述をアテにしないこと。下の「参考」に掲げた複数のソースから引き写していますが、いまいちわかりにくい。現在考える「ビール」よりも広い範囲を「エール」がカバーしていたようだし、時代によって「エール」「ビール」の指すものも変動しているようだ。また、大陸(おもにドイツ)とイギリスでも事情が違うようだ。中世のある時期のイギリスでは自家醸造が当然だったみたいだけれども、同じ時期のドイツではどうだったのかとか、問題になるのは醸造権なのか販売権なのかとか、気にはなるけれども簡単に答えは落ちていない模様。
エールの種類
エール(上面発酵麦酒)の種類としては、
- ペールエール
- 英国バートンで発祥したポップ風味が強い琥珀色のビール。
- スタウト
- ローストしたモルトを用いる、いわゆる「黒ビール」の一種。アルコール度数が高く、味が濃厚。苦味・酸味が強い。「ギネス」はこれに含まれる。
- アルトビール
- ドイツ・ニーダーザクセン地方で醸造されるビール。苦味が強い。
- ケルシュ
- ドイツ・ケルン地方で醸造される淡黄色のビール。大麦麦芽と小麦麦芽を用い、上面発酵に用いる酵母を用いながら、下面発酵に近い低温で醸造される。
- ヴァイツェン
- ドイツ・バイエルン地方で醸造される白みがかった金色のビール。小麦麦芽を主原料とし、甘くフルーティな香りがある。
などが挙げられる。エールは冷やされずに供されるのが通常であるらしい。
現代日本のビールとエール
下面発酵式のビール(ラガー)は、15世紀頃にドイツ・バイエルン地方で生まれたローカルなビールで、低温でも活動する酵母を用いて秋に仕込み、ひと冬を氷室で熟成させるものだった。19世紀に冷却技術の発達によって通年生産が可能になり、爆発的に普及した。その中でも、チェコのピルゼンで改良された黄金色のビール(ピルスナー)が現在のビールの主流となっている。ラガーは大規模な設備を必要とするが、大量生産に向いているといい、日本の大手ビールメーカーの主要なビールもラガー(ピルスナー)である。
一方、それほどの大量生産を前提としない地ビールメーカーの中には、個性の出やすいエール(上面発酵式ビール)を生産するところが多い。
参考
註
- [註1] 『CW大辞典(3代目)』「エール」、無名氏による記述