バリアントエンジン(variant engine)は、変種(variant)のCardWirthエンジン。Dataフォルダ内の素材(背景素材・Midiなど)をテーマに合わせたものにしたり、ゲーム内の用語を改変したりすることで、「中世ファンタジーT型」とは異なる舞台をシステムとして準備できる。
2005年12月、愛護協会が「現代T型」のサンプルを提示したのがはじまりであり、じぇんつ氏「学園バリアント」が続いている。2007年10月現在、バリアントエンジン向けの作品が公開されているものの、その数は多くはない。
現在、広く公開されているバリアントエンジンには、次の3つがある。
愛護協会「現代T型」 (通称「現代バリアント」「探偵バリアント」) |
2005/12/21 サンプル初出 |
じぇんつ氏「現代学園ものバリアントエンジン」 (通称「学園バリアント」) |
2006/02/04 テスト版初出 |
大江戸事件帳氏「カアドワアス大江戸バリアント」 (「大江戸バリアント」) |
2008/04/17 一般公開 |
用語の互換性
バリアントエンジンは、通常エンジン(中世ファンタジーI型)と比較して、フォルダ名や用語に変更点があることがある。
実行ファイル名 | フォルダ名 | ||||
---|---|---|---|---|---|
エンジン | エディタ | 宿 | シナリオ | データ | |
通常 | CardWirth.exe | CardWirthEditor.exe | Yado | Scenario | Data |
現代 | ModernWirth.exe | 独自エディタなし | yado | Scenario | D_M1 |
学園 | S_C_Wirth.exe | SchoolWirthEditor.exe | heya | Rumormil | D_S1 |
江戸 | OedoWirth.exe | OedoWirthEditor.exe | Naga | Ohanashi | D_E1 |
素質名 | 特殊型名 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通常 | 標準型 | 万能型 | 勇将型 | 豪傑型 | 知将型 | 策士型 | 無双型 | 天才型 | 英明型 | 凡庸型 | 英雄型 | 神仙型 |
現代 | 標準型 | 万能型 | 勇将型 | 豪傑型 | 知将型 | 策士型 | 無双型 | 天才型 | 英明型 | 凡庸型 | 英雄型 | 神仙型 |
学園 | 標準型 | 万能型 | 根性型 | 熱血型 | 理性型 | 秀才型 | 無双型 | 天才型 | 英明型 | 努力型 | 超人型 | 神仙型 |
江戸 | 標準型 | 隠密型 | 剣客型 | 豪傑型 | 参謀型 | 策士型 | 剣豪型 | 賢才型 | 秀英型 | 晩成型 | 覇道型 | 神仙型 |
宿 | 冒険者 | 依頼 | 通貨単位 | ||||||
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通常 | 冒険者の宿 | 新規宿 | 冒険者 | 冒険者1 | パーティ | 貼紙 | 冒険 | sp | |
現代 | 探求者の宿 (探偵事務所) | 新社屋 | 探求者 | 探求者1 | パーティ | 資料 | 探求 | sp | |
学園 | 学校、学園 | 新学園 | 仲間 | キャラ1 | パーティ | 噂話 | 探索 | sp(スペシャルパワー) | |
江戸 | 万長屋 | 新長屋 | 仕事人 | 仕事人1 | 旅客衆 | 貼紙 | 旅噺 | mon |
世界の拡張か、独自の世界か
CardWirthには早い時期からSF・西部劇・現代日本などを舞台にしたシナリオが存在していた。自由性の名の下に寛容に共存させる見方もあったが、中には中世ベースの「CardWirthの世界観」との齟齬を理由に批判的な見方をする者もあった。CardWirthのシステム上、プレイヤーズキャラクターの設定はプレイヤー側が主導権を持っており、シナリオ制作者の大胆な介入が難しいことによる。いくつかの作品では、冒険者の宿を拠点とする冒険者が剣や魔法でゴブリンを討つ「中世ファンタジー世界」と、現代の科学技術が存在する舞台とを折り合わせる努力(「魔法」「超古代文明」「時空転移」の活用)がなされている。
バリアントエンジンを、「従来のCardWirthの拡張」と見るか、「CardWirthエンジンを利用した別のゲーム」と見るかは、人により異なる。
前者の立場では、それまでもあった「中世ファンタジーではない世界(たとえば現代)舞台にした、CardWirth的な冒険シナリオ」の制作やプレイに便宜を図るための拡張と見ることができる。「でこぱち」など、オリジナルエンジンの外見を変更するシステムはそれまでもあったが、ゲーム内の用語などを変更できること、テーマに沿った素材が「デフォルト素材」として利用できるのが特徴である。「現代バリアント」については、公開元である愛護協会がどのような位置づけをしているかはっきりしておらず、ユーザーシナリオの蓄積も多くないが、この方向を志向していると思われる。このバリアントにより、プレイヤーが「冒険者」を「探偵」に読み替えたり、ユーザーが中世と現代との辻褄あわせをおこなったりすることなく、最初から「探偵事務所に持ち込まれた依頼に取り組む探偵」というシナリオを楽しむことができる。
後者の立場では、通常エンジンとの継承性・互換性をさほど意識することなく、「独自のゲーム」を制作していることになる。「学園バリアント」はこの方向性を打ち出しており、spにも単に通貨としてではない解釈を持たせるなど、ゲームそのものの新たなルールを築いている。システム用語の一部は独自のものを採用しているために「現代バリアント」との互換性も一部欠いているが、宿フォルダ・シナリオフォルダの名称を変更することによって混交を避ける工夫がされており、バリアントエディタやバリアント間データ移行のためのユーティリティシナリオを持っている。