連れ込みNPC(つれこみNPC)とは、PCとして使用することのできるNPC。見方によっては「連れ込みPC」とも言える。

シナリオ中で同行したNPCと別れずに宿に帰還することで「連れこみ」が起こる。内部的には同行キャストカードをキャスト消去の処理を行わずにシナリオを終了することで発生するもので、しばしば「バグ」(消去処理忘れ)で宿に連れ込まれることがある。

NPCを宿に連れ込むことが目的のユーティリティ的な「シナリオ」もある。狭義で「(NPC)連れ込みシナリオ」と呼ぶが、シナリオ内のストーリーの上で宿に同行することになるものも含めて、広く連れ込みがあるシナリオを「連れ込みシナリオ」と呼ぶこともある。連作シナリオの中には、連れ込みNPC出身のPCをパーティに含むことを前提条件にするものがある。

かつてIB氏が連れ込みNPCを調査し、「連れ込みNPC一覧表」を制作していた。2005年5月5日段階で403名が挙げられ、このほかにもさらに多数の「連れ込みNPC」があることが示唆されている。

沿革

最初の「連れ込みシナリオ」は ゆうや氏『メタル君の家』(1998年9月28日公式サイト掲載)であったが、これはバグによる連れ込みという。明確に連れ込みを行う意思を持って制作・公開された最初の作品は、さくらもり氏・士門氏『荒野の六人』(1998年10月12日公式サイト掲載)で、「マリア」というNPCが連れ込めたという。

草創期の連れ込みNPCとしては、初期版の『月夜の晩に』(1998年12月)で連れ込むことのできた「レタルエルム」、『超亜空間書店兄勇堂』(1998年12月)の「バイト君」、『ぴかくぽら』(1999年5月)の「チュカ」などが挙げられる。ただ、当時の連れ込みNPCの中にはしばしばバランスを失したものも散見されたという。上に掲げたキャラクターも強力であったが、同時に人気のあるキャラクターであった。『連続殺人事件』(1999年7月)では、シナリオの展開によって多数のNPC(IB氏「連れ込みNPC一覧表」によれば5人)が連れ込めたが、バランスは取られていたという。

プレイヤー中には連れ込みNPCの愛好者もおり、コミュニティで愛用した連れ込みNPCの話題が持ち上がることもある。2000年頃にはLQ氏により「連れこみ可能NPC愛好会」が運営されていた。

連れ込みNPC運用の長所と短所

連れ込みNPCの制作者側の利点の一つとしては、いわば「主人公」を送り出すことができることが挙げられる。シナリオ作者はPCの性格や過去に介入することができないため、ストーリー志向の長編シナリオを中心に展開が難しくなることがある。このため、「連れ込んだ特定のPCを含むパーティ」を前提条件とするシナリオも多く作られた。

また、自分の生んだキャラクターを末永く愛してもらいたいという心もあるだろう。

冒険者の宿への同行の理由として示されるものとしては、冒険を求めるため、故郷に居づらくなったため、PCに恋愛感情を抱いたため、などがある。

連れ込みNPCを使う側の利点としては、PCのキャラメイキングを省略できることが挙げられる。よく準備されたキャラクターは、冒険者たちの物語を想像する上で頼りとなるだろう。

その一方で、自らの想像する世界との不適合、シナリオのバランスを崩しかねない強力な能力、連れ込みNPCのイメージ崩壊の危惧などの理由から、連れ込みNPCを煩わしいものと考えるプレイヤーもいる。連れ込みNPCに思い入れを抱かないプレイヤーのために、増えすぎたNPCの「処分」を目的として「人身売買シナリオ」と呼ばれるものも存在した。

近年のギルド登録シナリオでは、「連れ込みNPC」自体がそれほど多くは見られない。初期に見られたような「押しかけ型」ではなく、加入の是非をプレイヤーに選択するものや、あらかじめ「連れ込みNPC」を加入させるためのシナリオであることを明記したシナリオが増えたように思われる。

おもな連れ込みNPC


関連サイト・参考文献