CardWirthにおけるシナリオ(Scenario)は、スクリプト・テキストと画像・楽曲素材を組み合わせてフォルダに収納したひとまとまり。典型的には、ひとつの「冒険」や「物語」に相当する。これらをユーザーが自由にシナリオを作成・追加できるのがCardWirthの特徴である。CardWirthにおいては「店」や「ユーティリティ」もシステム上区別せず「シナリオ」と呼ぶ。
一般名詞としては「脚本」「筋書き」「進行計画」といった意味であり、テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)ではゲームマスターが用意する「物語」を指した。CWの「シナリオ」はTRPG用語からの転用と思われる。
CardWirthのシナリオファイルは"Summary.wsm"(貼り紙。内部で用いる変数のデータも格納)と、スクリプト・カードを記載する各種.widファイル、各種素材から構成され、"Scenario"フォルダ以下に格納することによってプレイが可能になる。
シナリオのジャンル
傾向や内容によってシナリオが種類分けされることがある。「種別」の欄で自称されることもあるが、必ずしも厳密な区別はない。
- 探索シナリオ
- 戦闘シナリオ
- ギミック戦闘シナリオ
- 読み物シナリオ
- 一本道読み物シナリオ
- 店シナリオ/道場シナリオ/街シナリオ(技能頒布シナリオ)
- ユーティリティシナリオ
傾向
groupAsk制作のシナリオにTRPG志向のものが目立つため、「CardWirthらしさ」をTRPGに求める見方もあるが、制約は存在しない。シナリオ制作者はさまざまであり、多様な作品を生み出してきた。TRPGシナリオを翻案したもの、演劇の脚本を翻案したもの、自作小説をゲーム化したもの、ノベルゲームを「移植」したものなどさまざまである。
志向する方向
TRPG志向
groupAsk(斎藤氏)制作のシナリオに代表される、TRPG的な意味での「ロールプレイングゲーム」を志向した、おもに探索系のシナリオ。かつて影響力のあった感想執筆者であるTHU氏がこの系統を「正統派」と呼称したこともあり、「CardWirthの原点」「CardWirthらしいシナリオ」とする見方もある。「CRPGにはできない、CardWirthならではのゲーム」が目指される。
視覚的な演出は作者によって異なるが、斎藤氏のシナリオに範をとったり、グラフィック重視とされるCRPGの逆を進むことを示すために、あえてシンプルな構成にする(16色のカード素材を用いるなど)こともある。
CRPG志向
市販のコンピューターRPGや、RPGツクールなどで作られるような、いわゆる「ロールプレイングゲーム」を志向するシナリオ。スケールの大きな設定、個性的なNPC、などとの親和性が強い。「(日本での)一般的なRPGをCardWirthで実現する」ことが目指される。
ADV志向(ビジュアルノベル志向)
アドベンチャーゲーム(あるいはその一種であるビジュアルノベル)を志向するシナリオ。テキストの洗練と視聴覚的な演出には意が払われている。代表例としては、
- さくらもり氏『Crescent Earth』
- 『アモーレ・モーテ』などのFuckin'S2002氏の諸作品